ミカ書の背景

論壇:          ミカ書の背景        12/16/2018

預言者ミカはユダの王ヨタム(BC742-735)、アハズ(735-715)、ヒゼキヤ(715-686)の時代に活躍し、「(北イスラエルの首都)サマリヤと(南王国の首都)エルサレムについて幻に見たもの」を預言しました(1:1)。

史上最初の世界帝国アッシリアは、有事の徴兵制ではなく職業軍人の常備軍を持ち、征服した国々の敗残兵を奴隷として傭兵部隊に組織した近代的な軍隊組織で、その破壊力はすべての国々の恐怖を引き起こしました。

サマリヤは一世代前の預言者アモスの時代から道徳的腐敗が蔓延していましたが、ミカはサマリヤが「野原の瓦轢の山」となる予言をしました (1:6~7)。サマリヤ陥落はBC722年です。またミカはアッシリアがエルサレムを攻撃包囲することについても預言しました(4:9~14)。

イスラエルでは貧富の差が極限になり、裁判官たちは買収され、宗教指導者たちも堕落していました。預言者たちも祭司階級も、迫り来る滅びを語ることなく、為政者に都合の良い未来を語りました(3:5-8,11)。神殿には人が群がり、宗教儀式は盛んでしたが(6:7)、愛も憐れみも正義もなかった中で、ミカは「正義を行い、慈しみを愛し、へりくだって神と共に歩む」ことを説教しました(6:6-8)。

北王国滅亡後に王になったヒゼキヤは、アッシリアに背き、新興国バビロンに頼ります。しかしバビロンからの使者に宝物庫と武器庫を見せて侵略の欲望を刺激させるという愚かな行為を犯し、預言者イザヤの叱責と滅びの予言を受けました(列王記下20:12-19)。ヒゼキヤの宗教改革は徹底せず(歴代誌下30:1-12)、結局南王国ユダは神の審判を免れることができず、アッシリアではなくバビロンによって滅ぼされました(587年)。

ミカは力に対して力で対抗することの無意味さと、この未曽有の危機から救われる方法は、自分たちの罪を悔い改めて主に立ち返ることだと説教しました。そうすれば主は理想の王メシア(救助者)をダビデの家系から起こして下さる。しかしこの説得を受け入れなかった北王国も南王国も滅ぼされ、メシア預言は成就しなかったかのように見えます。しかし民の祈りに応えて、神が歴史に直接介入し、メシアを遣わされるというメシア信仰は、バビロン捕囚によって預言者の真理性が確認された後、イスラエルにおいて確立しました(ルカ1:68-70など)。

ローマ帝国下という時代に登場したイエスは、真の解放(救い)は武力による解放ではなく、罪の悔い改めと、神と人への愛によって、罪の奴隷状態から解放されると説教しました。しかし武力によってイスラエルを解放してくれる王なるメシアを期待した人々は失望し、ついにイエスを十字架に追いやったのです。

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