論壇: ダニエル書のアウトライン 8/29/2021
ダニエル(神は審きたもうの意)は少年(15歳?)の時、バビロンのネブカドネツアルによって、他の3人と共にバビロンに連れて来られます(BC605年、1章)。ダニエルの活動について年号が明記されているのは「ネブカドネツアル(Ⅱ世)王が即位して2年目」(603年、2:1)から「ダニエルはキュロス王の元年まで仕えていた」(539年、1:21)とありますので、およそ80数年の生涯でした。「ペルシャの王キュロスの治世第3年」(10:1)にダニエルは幻を見ますが、これは引退2年後
のことでしょう。
ダニエル書は時系列に編集されていませんので時代設定が困難ですが、さらに王の名前が、バビロンでもペルシャでも同一人名(父と子の名前
が同じ)が多いので解読困難です。
1971年発行の『新聖書大辞典』ではペルシャのダレイオスとキュロスは別人であるとの解釈でしたが(9:1と10:1)、考古学の古文献『バビロニア年代記』の詳しい研究により、この二人が同一人物である(ダレイオスは即位名)との提唱(ジョイス・ボールドウイン)が有力になっています。従って『新聖書大辞典』の「著者のペルシャ時代についての叙述は不正確」(893頁)との評価は翻っています。
ダニエル書の中心は王の夢を解く2つの話、神の指が書いた文字をダニエルが読み解く話、ダニエルが見た4つの幻の話、また迫害の話によって構成されています。①巨大な像の夢(2章)、②大きな木の夢(4章)、③神の指によって書かれた壁に書かれた字(5章)、④4頭の獣の幻(7章)、⑤雄羊と雄山羊の幻(8章)、⑥定めの70週の幻、⑦終わりの幻(11、12章)。問題はこれらが時系列で編集されていないため読者は混乱することです。下記のようにまとめてみました。
第1部:バビロン時代(Ⅰ-5章、7-8章)
1、序論(場面設定):信仰に立つ少年たちの紹介と改名(1章)
2、国々を支配する天の神:ネブカドネツアルの2つの夢の解説、
迫害と裁き(2―4章)、ベルシャツアル王への裁き(5章)
ペルシャ時代の挿入(獅子の洞窟に投げ込まれる)(6章)
4頭の獣、雄羊と雄山羊の幻(7、8章)
第2部:ペルシャのダレイオス(キュロス)時代(6、9~12章)
「捕囚70周」(9章)
164年までの近未来予言。この部分が最も詳しい(10、11章)
終わりの時の預言(12章)