あいまいな日本語

論壇:       あいまいな日本語      8/15/2021

8月は太平洋戦争敗戦を銘記する月です。15日を「終戦の日」とマスコミは呼びますが、これは極めてごまかしの言葉です。「敗戦」という言葉を使うと、なぜ負けたのか、その責任は誰にあるのかと戦争責任を追及することになるので、終戦というあいまいな言葉に逃げているのです。いつの間にか戦争が終わったのではありません。

日本キリスト改革派教会は戦争責任について「今次の大戦に当たりては宗教の自由は甚だしく圧迫せられ、我等の教会も歪められ、真理は大胆に主張せられざりき。我等は之を神の聖前に恥じ、国のために憂ひたり」と告白し、30周年宣言では「教会と国家に関する宣言」を発表して戦争責任と戦後責任を告白し、これからの正しい教会のあり方を明確に示しました。

近頃はあいまいな言葉がたくさん使われています。「・・させていただきます」は、以前の論壇で紹介しましたように、自分の行動に対する意思と自信を持てないがゆえの逃げ言葉です。『バカ丁寧化する日本語』(野口恵子著)ではこれを紋切り型の慇懃無礼な表現だと指摘しています。「私が・・します」と断定的に発言するのは、強い意志を持った責任感あふれる言い方ですから信頼できます。「あなたがたは『然(しか)り、然り』『否(いな)、否』と言いなさい。それ以上のことは、悪い者から出るのである」(マタイ福音書5:37)

先日のオリンピックでは入賞した選手が「がんばらせていただきました」とインタビューに答えていました。メダルは取れても国語の試験なら落第点です。もし牧師が「御言葉の説き明かしをさせていただきます」などと言い出したら首にしなければなりません。聴衆に、とりわけ子どもたちの日本語教育に害を与えるからです。

最近私が気になるのは「・・になります」という言葉遣いです。「洋服売り場はどちらですか?」「3階になります」、「おいくらですか?」「1000円になります」、「こちらがお品物になります」、「聖書の・・を朗読します。・・頁になります」など聞くに堪えません。「になります」とは何かが変化する時や結果をあらわす時に用いる用法です。「もうすぐ秋になります」は正しい用法ですが、変化をあらわさない場面では使えません。「になります」は「・・です」と言い切ることによって責任を取らされるのを無意識の内に避ける保身から生じている言葉です。

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