ウクライナ戦争とロシア正教会

論壇      ウクライナ戦争とロシア正教会    4/3/2022

カトリック教会は1054年の「東西分裂」(大シスマ)によって東西に分裂し、西のローマカトリック教会と東のギリシャ正教会ができました。世界各地にはギリシャ正教会の教義を奉じ、それぞれの国名を帯びた「○○正教会(Orthodox Church)」が次々に誕生しました。ロシア正教会、ルーマニア正教会、ブルガリア正教会、日本正教会などです。これらは総称して東方教会とも呼ばれます。

正教会の教義では「聖伝」(神の啓示に基づく伝統的な教えと信仰)が最も重要視され、聖書は聖伝の中核と位置づけられていますが「聖書のみ」ではありません。民族の歴史と文化が取り入れられ、イコン(聖画像)や聖遺物などが重視されます。神田のニコライ堂や目黒のロシア正教の会堂には、聖画像やイコンがきらびやかに装飾されています。

さて3月7日付のカトリック系配信「世界キリスト教情報」第1624号によりますと、ロシア正教会の支配下にあったウクライナの諸教会が独立して「ウクライナ正教会」を樹立しようとしているとのことです。

欧米のキリスト教会では、性的少数者の人権に配慮した「多様性」が訴えられていますが、ロシア正教はこの「自由な価値観」を否定します。プーチン大統領の長年の盟友であるロシア正教のキリル総主教はウクライナ進攻(侵略)を批判しません。むしろプーチンが描く現世的なロシア帝国創出の精神的かつ宗教的なバックボーンとなっています。従ってロシア国民がプーチン批判の声を上げないのは、強圧的な言論統制が大きな理由でしょうが、ロシア民衆の素朴な信仰をプーチンが巧妙に利用しているのも一つの理由なのです。

LGBTなどとんでもないと考える彼らによれば、プーチンはリベラルな信仰に騙されているウクライナの教会を正しい信仰に導き、素朴な信仰の教会を基にした「大ロシア」帝国を創出する英雄なのです。

「世界キリスト教情報」紙は「この戦争には何か悪魔的なものがある」と警告しています。また米国のウエスター大司教はプーチンが核戦力の警戒態勢強化を命じたというニュースに触れて「背筋が凍った」と言い、世界のカトリック教会に向けて今こそ断食と祈りによって、核戦争への一歩であるこの戦争を止めねばならないと訴えています。

私たちの改革派教会でもLGBTの問題はこれから大きな議論になります。悪魔の策略はどこにあるのか、私たちも注意して世界の状況とキリスト教会の戦いを見ていかねばなりません。

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