良書紹介「いこいの水のほとりに」

論壇: 良書紹介『いこいの水のほとりにて』(スポルジョン著) 1/21/2018
表題の本を訳者の佐藤強引退教師から寄贈していただきました。書名の副題には「魂への慰めのことば」と付記してあります。早速ぱらぱらと読んでみました。この本は一日一話の構成で、ミニ説教が367掲載されています。一つの説教が約1000字ですから、私が昔10年ほどラジオで放送していました3分メッセージを思い出させてくれました。
牧師の家庭に生まれた著者のスポルジョンは、著名なイギリスの説教者です(1834-1892)。15歳で洗礼を受け18歳で小さなバプテスト派教会の牧師に就任し、わずか1年で礼拝出席者が急増し、400名を越えるほどになったと言われます。19歳のときロンドンの教会にスカウトされ、100名ほどだった出席者が800名を越えるようになりました。彼が26歳になり、新会堂建築後の礼拝には6000人、木曜日の集会には3000人が集まったと記録されています。
それほどまでに人を魅了する説教とはどのようなものだったのでしょうか。それをこの説教集から読み取ることができます。その理由の一つは、彼がロンドンの貧しい労働者に対する暖かい同情心にあふれていたことです。当時のロンドンは急速な都市化と劣悪な環境のスラム街となり、貧困の差が極限状態になっていました。そのような中できれいごとを言っても人は共感しません。彼らに理解できる言葉で、彼らを愛しておられるイエスをシンプルに、何のてらいもなく提供したのです。
現代社会で誰かに「キリストはあなたを愛しておられます」と言っても、変な目で見られるでしょう。しかしスポルジョンの時代にはその言葉が人々の心に届きました。貧しい人々は誰からもそのような優しい言葉をかけられたことがないからです。
また人々が集会に大挙して集まって来るのは、その当時娯楽がなかったからです。娯楽は金持のものでした。テレビもラジオもなかった時代、庶民は教会で開催される無料の集会にこぞって集まりましたし、そこで語られる暖かいメッセージと、金持への痛烈な風刺を喜んだのです。
内容の一部をご紹介します。「なぜ心配するのか」(ルカ12:25)
「思い悩んでも、自分の命を延ばすことなどできないと主は教えてくださいました。もし農夫が雨が降らないと心配しても、天の雲を呼ぶことなどできるでしょうか。たとえ、逆風のため荷物で満杯の船の到着が遅れていることを貿易商人がどんなに心配しても、その強い風の方向を変えることができますか。…思い悩むことは愚かなことです。…もし私たちが主キリストの内にあるのであれば、神

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