論壇: 詩編を味わう、2 10/17/2021
150編ある詩編の約半分73が「ダビデの詩」と標題がついています。「…の」と訳されたヘブル語「レ」には「作者」「…について」「…にささげられた」「…のために」という用法がありますから、73の詩編すべてがダビデ作ということではなくても、ダビデの生涯、個人的な信仰体験、戦争体験が詩編全体に大きな影響を与えています。従ってサムエル記によってダビデの生涯をよく学んでおくことが必要です。
「ダビデが…の時」という説明書きがついている詩編を集めてみました。
最後の「上」、「下」はサムエル記上、下の略です。
3、「ダビデがその子アブシャロムから逃れたとき」(下15~17章)、
18、「主がダビデをすべての敵の手、またサウルの手から救い出されたと
き」(下22章)、
34、「ダビデがアビメレクの前で狂気の人を装い、追放されたとき」
(上21:14)、
51、「ダビデがバト・シェバと通じたので預言者ナタンがダビデのもとに
来たとき」(下12章)、
52、「エドム人ドエグがサウルのもとに来て『ダビデがアヒメレクの家に
来た』と告げたとき」(上21:8,22:9)
54、「ジフ人が来てサウルに『ダビデがわたしたちのもとに隠れている』
と話したとき」(上23:19)
56、「ダビデがガトでペリシテ人に捕らえられたとき」(上21:12)
57、「ダビデがサウルから逃れて洞窟にいたとき」(上22:11、24:1)
59、「サウルがダビデを殺そうと、人を遣わして家を見張らせたとき」
(上19:11)
60、「ダビデがアラム・ナハライムおよびツオバのアラムと戦い、ヨアブが
帰って来て塩の谷で1万2千人のエドム人を討ち取ったとき」
(下8:3、4)
142、「ダビデが洞穴にいたとき」(上22:11、24:1)
このようにダビデ詩編の表題を見ますと、ダビデの生涯で最も苦しかった時の出来事が詩編第2巻(42―70)に集中的に編集されています。ダビデはその生涯の初期、サウル王から迫害を受けて逃げ回っていました。この時の苦しい思い出をダビデは思い起こし、苦しみから救ってくださった神の御業を忘れないために詩を書いたのでしょう。しかしダビデの生涯で最も重要であり喜びであったろう「神の箱奪還」とエルサレムへの入場行進(下6章)は登場しません。いやこれはコラの歌、アサフの歌の中に登場する多くの賛歌と「都上りの歌」によって表されているのかもしれません。